イノベーションのジレンマ

以前からずっと読みたいと思っていました

著者: Clayton M. Christensen
出版社: 翔泳社; 増補改訂版
単行本: 327ページ
発売日: 2001/07
ASIN: 4798100234

 数年前から読みたい読みたいと思ってきた(思ってきただけで実行に移さなかった)、「イノベーションのジレンマ」を先日ようやく読みました。

 顧客重視として顧客の声に積極的に答え、自分たちの持つ技術を磨き成功している、考えられる最善の策をとっていると考えられる会社が、ある日突然押し寄せてきた破壊的技術によって没落する。この本はデータがとりやすいHDDディスク業界のデータを元にして、なぜそのようなことが起こるのか?そして、それを防ぐにはどうしたらいいのか?ということをひもといていきます。

破壊的技術とは何か?

 まず、破壊的技術とは何か?それがわからないと話になりません。破壊的技術になりうるものというのは筆者によれば

  • 既存の収益モデルつまり価値基準では想像もつかないような「新しい価値基準」をもたらすもの。
  • 今までの技術の進歩の延長線上にあるもの、純粋な後継技術、ではない。

ということになるかと思います。

 1つめに挙げた、新しい価値基準ということが大切になります。つまりはその破壊的技術が生まれた時点では、既存の利用法にはあまり役に立たずそれが効果的に利用される場というものがはっきりとは見えていない状況にあります。

 このため破壊的技術が生まれたときには、その業界を主流を占めている企業において既存顧客が望むものではないために、投資が行われないという結果になります。このことはふつうに考えれば賢明な判断です。企業のリソースは無限ではありませんから、顧客が望むものにリソースを集中するということは当たり前のことです。

なぜイノベーションのジレンマが起こるのか?

 では、なぜ既存の顧客に無視をされるような破壊的技術が、大企業を脅かすまでに発展するのでしょうか?これに答えるために筆者は3つの点を挙げています。

  • 顧客の要求水準
  • 技術の発展スピード
  • 新しい価値基準

 HDDディスクドライブ業界では、かつては年100数十%?(どこかに書いてあったような気がしましたが、失念・・・)もの急成長をするそうです。そのため、破壊的技術が生まれた当初では既存の顧客の要求水準を満たさなかったものが、いつの間にか満たすようになっているという状態になります。

 そのような状況になると、既存技術と破壊的技術の比較において新しい価値基準というものがもたらされます。たとえばHDDディスクドライブ業界では、既存の価値基準が容量であったものの、破壊的技術の発展が顧客の要求水準を満たすことで、次第に大きさなど他の価値基準に移っていくのです。破壊的技術は新しい価値基準をもたらすものであるので、次第に既存技術は駆逐されていきます。このようにして、既存技術を持つ企業が破壊的技術を持つ企業に脅かされるのです。

どうすればイノベーションのジレンマを防ぐことができるのか?

 これを防ぐため、破壊的技術が現れると察知したときに、筆者は以下のような対応策を挙げています。

  • 今までの成功理論が及ばないような破壊的技術を「小さな」組織を新たに組織すること。
  • 市場・使用方法は予測不可能なものとして投資し、新たな市場を発掘すること。
  • 「学習のための投資」つまりは上に上げたように使用方法は未知数なので、実際に投入してどのように使われるかを知ることで、本当に必要な投資をする(全力投球で投資しない)こと。

 何度も書いているように、破壊的技術は新しい価値基準をもたらします。そして、その新しい価値基準は実際に市場に投入し、フィードバックが得られるなかで試行錯誤することではっきりとしたものになります。

 そのため今までの成功理論、成功哲学が及ばないような小さな組織で動くべきだとしています。また最初から使用方法を決めた上で投資をすると、それが外れたときに莫大な損失となります、そのため最初から全力の投資をしてはなりません。

感想

 かなり夢中になって読んでしまいました。ビジネスには全く持って素人なんですけれども、とってもわかりやすく書かれていたので、突っかかることなしに読むことができました。破壊的「技術」なんて書かれていて、技術のことだけかといえばそうではなくていろいろあって、たとえばいつの間にか親会社のイトーヨーカ堂よりも大きくなってしまったセブンイレブンなどもそうでしょう(たぶんね)。