こうの史代: 長い道

 昔から阿吽の呼吸などといいますが、心にはどうやら波長というものがあるような気がします。心の波長が合ってくると、ちょっとした変化から気持ちの変化が読み取れてしまったり。今日はいいことあったのかなとか、そうでないのかなとか。

L25でオススメされてました

長い道
著者: こうの史代
ページ数: 213ページ
出版社: 双葉社
発売日: 2005年7月28日

 研究室においてあった、L25でオススメされていて、興味を持ったので買ってみました。

あらすじなど

 両親が勝手に結婚することに決めてしまった荘介どのと道の物語。荘介どのの方は、全然タイプではないといい、しばしば浮気をするわ、道を質に入れようとするは、本当にひどいと言ったらひどい。一方で、道はそんな生活にもかかわらず文句の一つも言わず、健気に淡々と家事をこなし、アルバイトもする。

 一見全く不幸そうな二人ですが、なぜか倖せそうなところに、この漫画の非日常的というかおもしろさがあるのでしょう。

 浮気などをしつつ、道が風邪を引いたら心配そうに看病をする荘介どの。一見何も考えていないような、全くとんちんかんな答えをしつつ、意外と実は色々と考えているだろうということを思わせる雰囲気を漂わせる道。どうして、こんなにも楽しそうにみえるのでしょうか???

 そんなのらりくらりとした雰囲気がこの漫画全体にも、ギャグとシリアスの絶妙なバランスとして漂っています。

 ゆっくりと時がが流れる日常を過ごしながら、お互いにだんだんと情なのか愛なのかが生まれてきます。浮気をしても道の働く姿を見て、道の元に戻ってくる荘介どの。不思議な力だけれど、「そうですか」の話からもわかる気がします。以前、自己愛のところで受け入れてくれる存在がいることでというようなことを書いたと思いますが、道の存在は荘介どのにとって実はそういうものなのでしょうね。

心に残った言葉

 いくつか心に残ったことがあるので、挙げておきます。

叶うと いいです ねえ

ねえ 荘介どの

おカネのほうは よくわからない けど
もし 荘介どのの願いがかなって
本当に大切だ と思う人に 出逢った時
おかえりと 言うのは わたしでは なくなるの かもね

でも そういう事なら いいのです
シアワセになったかなあ と心配しなくてもすむもの

竹林どのの時みたいに

こうの史代『長い道』

でも 判ってる しな
そうそう 忘れるもので ない事ぐらい
相手が 生きていても
十年経っても
そして 新しい 好きな人が 出来ても

(略)

…竹林どの
わたしも シアワセになっても いいのですよね?

こうの史代『長い道』

ほんと馬鹿
おれなんかと 結婚しちゃってさ
…今さら イヤだって言っても おれもう別れて やんないかもよ

こうの史代『長い道』

 と、ここまで書いて物語で重要な竹林どののことを書くのを忘れてしまいましたw。

 最後に一言書いておくと、どの道を選ぶかよりも、選んだ道でどう生きるかが重要ということをここでもいっているのかなぁなんて思いました。