イノベーションのジレンマを打ち破ろうとする、任天堂

まさにイノベーションのジレンマ

 どんどんと、画質が良くなるというスペック競争に陥ってしまったゲーム業界。そこはまさに、イノベーションのジレンマで書かれているような状況になってしまったわけです。

イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき
著者: Clayton M. Christensen
出版社: 翔泳社; 増補改訂版
ページ数: 327ページ
発売日: 2001年7月

 Wiiの発売にあわせて岩田社長のインタビューが載っています。今回はその2回目。
後藤弘茂のWeekly海外ニュース 任天堂 岩田聡社長インタビュー(2) DSとは異なるアプローチでゲーム人口拡大を目指すWii

 このインタビューで引っかかったのは以下のところ。

去年の1.5倍のデータを入れて、コースを何倍にして、仕掛けを増やして、プレイ時間を延ばして……、数字のスペック競争みたいになっちゃった。去年の1.5倍のマップがある同じゲームにあなたは驚きますかというと、驚かないですよね(笑)。

これは、実用品と我々がやっている娯楽品の大きな違いなんですが、世の中のあらゆる商品開発って、お客様の言うことを聞くことで出来ているんですね。お客様が答えを知っているから、徹底してお客様のご不満、隠れたニーズを探し出して商品を作るんだ、これが商品開発の王道だと思います。

これは、まさにイノベーションのジレンマで陥る「顧客重視として顧客の声に積極的に答え、自分たちの持つ技術を磨き成功している、考えられる最善の策をとっていると考えられる会社が、ある日突然押し寄せてきた破壊的技術によって没落する。」状況に入りつつあることを表しています。

 たぶん、これはSonyの久多良木さんもある程度わかっていることなのでしょう。ですから、PlayStation 3を単なるゲーム機としてではなく、エンターテイメントコンピュータとして立ち上げようとしていた。それに対して、任天堂は新しいユーザ層の獲得、ゲームから離れてしまってしまった層の再獲得という違ったアプローチでそれを打ち破ろうとしている。そんな状況なのではないかと思います。

 そこで、任天堂はそれに続く文章で書かれているように、新しい破壊的技術を導入しようとした。DSの場合ではそれが非常にうまく行きました。というのも、これは任天堂が64やGCで負けたからできたことなのでしょう。勝っていたら、たぶんそれはできなかった。人生一事が万事塞翁が馬といいますが、本当に何が起こるかわかりませんね1

 この記事自体は、その後もっとおもしろいところに話が及ぶわけですが、それについてはまた今度。

  1. といってもまだ勝負が決まったわけではありませんが。 []