書評: 空中庭園

空中庭園
著者: 角田光代
ページ数: 281ページ
出版社: 文藝春秋
発売日: 2005年7月8日

 「対岸の彼女」に続き、角田光代の小説2冊目。数日前に読み終えて、この書評を書いていたのだけれど、なんだかうまく書けずにいた。ただし、今年の目標は読んだ本は必ず書評を書くということだったので、この本もちゃんと書きたいと思う。

対岸の彼女

 秘密を作らないということが一応の決まりである家族がそれぞれに隠し持つ秘密。それを家族 + 周りの人の6人の視点から少しずつ時系列を変えて描く。

 秘密とはなんだろうか?いわゆる、ばれたらまずいものというほかにも色々なものがあるような気がした。言葉にするのが恥ずかしくて、もしくはできなくて言わないこと。思い出すと傷つくので思い出さないことにしていること。

 そんな秘密は時にはすれ違いを起こす。家族というのはどうも心理的な距離が近すぎて、様々な感情が直接届いてしまう。だからなのか、家族であるからこそ言えること、そして家族であるからこそ言えないことが出来る(どこかに引用すべき文章があったのだけれど出てこない)。そんな中で6人の視点からそれぞれの悲しみが浮かぶ。ありきたりな意見だけれど、その多くは家族だからこそ言わなくたって伝わるんじゃないかという甘い期待から起こるような気がする。

 同じことに対する(正確には同時ではないが)6人の思っていることはそれぞれ違う。家族ですら。あらためて、当たり前なのだけれど人間は言っていることと思っていることを全く別にすることが出来ると感じた。だから信じないということも出来る。そう考えると、やはり思ったことを素直に口に出来る人はかけがえのない人であって、大切にしたいと思う。

 秘密というのはきっと、秘密がないことが大切なんではなくて、秘密が明かされたときにそれを受け入れるか受け入れないかが大切なんじゃないかと思った。

 目標まで残り194冊。