書評: ソクラテスの弁明 / クリトン

ソクラテスの弁明 / クリトン
著者: Πλάτων (プラトーン)
ページ数: 117ページ
出版社: 岩波書店
発売日: 1964年1月

 ソクラテスがとてつもなくかっこいい。

 ソクラテスはアテナイの国家が信じる神々とは異なる神々を信じ、若者を堕落させた」という罪状で公開裁判にかけられる。そこでの弁明が前半「ソクラテスの弁明」。後半は親友クリトンとの最期の対話。

 この弁明において、ソクラテスは自分の無罪にするような、つまりはたとえば情に訴えるような弁明を行うこともできたのだが、敢えてそれをせず、自分がいかに無罪であるかを他者の心理をきちんと読み解きながら行った。

 クリトンでは親友クリトンが脱走を手助けするから(この当時、看守に少しの金を積めば脱走できたそうである)脱走しようと持ちかけるのだが、いくら悪法であったとしても、法を守らなければ、しかも元々の罪状を肯定することにもなりかねないとして(国法を破るものは、若者を堕落させるような危険な人物であるに違いないというようなこと)、断固拒否したのであった。

 ソクラテスは本当に真理というものに対して謙虚だったのだろう、あくまでも哲学的に考えた真理というものを全うし続けたのだった。

 そして、わたしは「ソクラテスの弁明」でのこの一節がとてつもなく好きだし、初めて読んだときにとてつもなく胸を打ち抜かれた。

好き友よ、アテナイ人でありながら、最も偉大にしてかつその智慧と偉力との故にその名最も高き市の民でありながら、出来得る限り多量の蓄財や、また名聞や栄誉のことのみを念じて、かえって、智見や真理やまた自分の霊魂を出来得るかぎり善くすることなどについては、少しも気にかけず、心を用いもせぬことを、君は恥辱とは思わないのか

 少しでもこんな風になりたい。

 目標まで残り180冊。