ミューズの晩餐 — 西村由紀江

もう数週間前でしたが、たまたま居間にいたときにやっていたテレビ番組が「ミューズの晩餐」。これは音楽家を招いて、彼(彼女)の人生を語ってもらう様な番組。今回のゲストはピアニストの西村由紀江という方。お名前も初めて聞いたのですが、とても有名な方らしい。

まずは、小さい頃の思い出の曲、トルコ行進曲。なぜ、思い出の曲か?と言うと、行進をしている部分を弾くのには指と指の間を1オクターブ開けなければなかった。けれども、小さい頃の彼女の手はそこまで大きくなかったのでどうしても物理的にそこの部分が弾けない。そこでどうしたか?考えて、考えて、1オクターブではなくてもっと狭い範囲にしてみたらどうか?と。実際に試してみると、行進のテンポが速く感じられるが十分聞ける。そこで、彼女は大切なことに気づく。意外と作曲というのは簡単な物なのかもしれないと。

この話を聴きながら、ああ人っていうのは、こうやって試行錯誤してうまくいった経験があるとその後楽しくなるんだろうなぁと、勝手に上達していくんだろうなと思った。そしてこの番組から目が離せなくなった。

彼女はテレビに映っていたときは、ころころとよく笑いそうな、穏やかな笑顔を浮かべたとても魅力的な女性に写ったのだけれども、小さい頃はあまりしゃべれない娘だったそうである。ピアノを始めたのも話さなくても音で伝えることができるからだそうだ。それがどうして克服できたのか?理由は演奏会か何かで、間違ったことを話してしまったときに、でも観客からは笑われて大丈夫だったということからだそうだ。そのとき、彼女はああ間違ってもいいんだということに気づく。

そして、最後は思い出の曲「手紙」。この曲を作曲するまでは様々な楽器と組み合わせて作曲をおこなっていたらしいが、(どういう下りか忘れてしまったのだけれど)ピアノだけでやってみようと思ったそう。色々模索して、最終的にsimplicityな方向に向かうというのはデザインの話を聴いているようで(もちろん作曲というのはデザインなのだけれども)とてもよかった。

最後にこれからも色々なことに挑戦してみたくて、毎日が楽しいと本当に楽しそうに話す彼女はとても輝いていた。この短い時間にどうやったら毎日を楽しんでいられるか?ということを少しだけでも教えてらったような気がする。