「はじめの一歩を踏み出そう — 成功する人たちの起業術」を読みました

はじめの一歩を踏み出そう — 成功する人たちの起業術
著者: Michael E. Gerber
出版社: 世界文化社
発売日: 2003年5月

この本は、起業をするときに陥る罠を分析し、どのようにして経営していくべきかについて書かれた本である。
自分なりにそのポイントの中心となる部分を意訳してみると、「経営をサイエンスにする」ということではないかと思っている。

単なる「やり方」のみを書くのではなく、なぜそう考えるかという哲学の部分がしっかりと書かれているため、他の本とは一線を画す。

さて、最初に「経営をサイエンスにする」ということがこの本のポイントであると書いた。
なのでまず、サイエンスにするということがどういう意味か書かなければならない。

サイエンスにするとは、個々人の能力に依存することなく、こう経営すればこうなるという意味で一般化するというつもりで書いている。1
 そのためたぶん、厳密なサイエンス、科学というもので言葉を使ってはいないので、その点了承されたい(ぉぃ。

なぜサイエンスにする必要があるか?

では、なぜ経営をサイエンスにする必要があるのか?
これには少なくとも2つの理由がある。

1つめは、仕事が明確になること。

人は枠組みがないと行動しづらい。
自由に行動してくださいといわれて、なかなかその場でいきなりうまく行動できる人はいないだろう。
それに明確な行動の基準がないと、どう評価したらいいのかもわからない。

また、起業をしようとする人に目を向けてみると、そういう人には「起業家」、「マネージャー」、「職人」の3人の異なる人格が存在し、それらが争うことにより行動に一貫性がなくなるというのを、これにより防止するためということ。
それらの人格の特徴を知り、バランスよくそれらを発揮することで明確に意志決定が可能となる。
それらをうまく統合する方法というのが本書で書かれている方法であり、経営をサイエンスにするということである。

2つめは、事業とその起業家を切り離す必要があるということ。

これは起業家自身の問題だけではないのだが、企業が特定の人に依存するということになると、その人が病気になったり辞めてしまった場合など、持続可能性がめざましく低くなってしまうためである。 
このことは、逆にいえば誰にもできるようでなくてはならないということであるから、自ずと仕事が明確になりゴールが見えるようになる。 

そして起業家と事業を切り離すことで、起業家が事業以外にもやりたいことなど人生をもっと楽しむという方向に目を向けることが可能となる。

サイエンスにするためには何をしたらいいか?

サイエンスにするためには何をしたらいいか?ということは、先に挙げた1つめに大きく関わってくる。
すなわち仕事を明確にすることである。
それには、本書ではマニュアルを作成することが重要であると解いている。

マニュアルにすることで、やるべきことが明確になり、さらに批判が可能になる。
マニュアル化 = 機械化、非人間化のためというステレオタイプな理由ではなく、批判する題材にすることでさらなる飛躍を目指すというためにおこなう。

この一連の流れを、この本では「イノベーション」 → 効果の「数値化」 → マニュアル化 → イノベーション → ・・・と表している。
この本でいうイノベーションとは新しいことを実行することで、それは現状を批判することからしか生まれない。

また、このマニュアルというものは、末端の社員だけがやる訳ではない。
上位の人たちが行う仕事を明確にするためにも、このことをが必要であると本書では説いている。

能力を育てる足場としてのマニュアル

いずれこのマニュアル化について深く掘り下げるつもりではあるが、マニュアル化というものが考える足場になっているような気がする。
繰り返しになってしまうが、人間は自由にやりなさいといっても考える足場がないと、どうして良いかわからず考えるのではなく悩んでしまう。
悩んでいるというのは考えているようでいて、何も考えていない状況であって(つまりぼーっとしているのと変わらない)、ゆえにこうしたマニュアル化というのを考えないと生産性がとても落ちてしまうし、本当に数少ない少数のアーティスティックな才能だけに依存してしまうと考えられる。

マニュアル化を行いそれを繰り返すことで無意識化することが出来るというこの仕組みは、以前「愛に生きる — 才能は生まれつきではない」で紹介したような手法であり、単に仕事だけではなく、様々な能力を育てる足場となるように思えた。

この本は、 このように単に起業の仕方だけではなく、人生哲学や能力などを発展させるためのヒントを与えてくれるという意味でも、とてもよく書かれていると感じた。

  1. ただ実は未だにこの部分がしっくり来ないで使っているので、公開するのに時間がかかってしまった。 []