書評: 混沌からの秩序

 最近重い本ばかり読んでいたら、めっきり進まなくなってしまった。

混沌からの秩序
著者: Ilya Prigogine, Isabelle Stengers
ページ数: 442ページ
出版社: みすず書房
発売日: 1987年7月

 散逸構造を提唱したことにより、ノーベル賞を受賞したイリヤ・プリゴジンの本。彼の本は何冊か持っているのだけれど、どれも難しい。その中でこの本は比較的入門書的になるものかもしれない。ほかの本を読む前にこの本から入っていくと、ほかの本にも似たようなことが書かれているので、いいかもしれない。

 前書きが「富の未来」などの著者、あのA.トフラーによって書かれているのに驚いた。

富の未来 上
著者: Alvin Toffler, Heidi Toffler
ページ数: 426ページ
出版社: 講談社
発売日: 2006年6月8日
富の未来 下
著者: Alvin Toffler, Heidi Toffler
ページ数: 409ページ
出版社: 講談社
発売日: 2006年6月8日

 古典力学や量子力学などは時間の可逆性を可能としているが、しかしながらエントロピーは増大するとする熱力学第2法則が可逆性を否定している。現実に起こっていることはもちろん時間は可逆的ではなく、水に落としたインクは元に戻ることなく拡散するし、壊れたものは元には戻らない。

 プリゴジンはこの不可逆性によってもたらさせる「時間の矢」について様々な研究を行ってきた。そして平衡から遠く離れた非平衡状態においてエントロピーがくみ出されることで、平衡状態で形成される秩序とは全く違った新しい秩序が生じることに気づき、それを散逸構造と名付けた。

 前半では科学史をひもときながら、自然科学が時間をどう扱ってきたか、さらには人文科学が時間がどう扱ってきたかについて考察を行う。後半では、プリゴジンの真骨頂、非平衡状態から如何にして秩序が形成されるのかについて記していく。

 目標まで残り183冊。