書評: 熱力学で理解する化学反応のしくみ

熱力学で理解する化学反応のしくみ
著者: 平山令明
ページ数: 251ページ
出版社: 講談社
発売日: 2008年1月22日

 タイトルがそのものずばりなのだけれども、化学反応をギブスの自由エネルギーという目で見たらどうなるのか?ということを記した本。ギブスの自由エネルギーの入門書といった感じか?

 文章が鼻をつくということをのぞけば、内容は結構いいような気がしている。著者にとって、科学というものが特定の宗教やイデオロギーとは結びつかない客観的なものであるということをこの本を通していいたいもう一つのことなのだと思うのだけれど、そうたびたび繰り返されるとうんざりする。そんなことよりもただ単に現象を示して、これはこう解釈できるんだ、一見ほかの現象も同じ式で解釈できるんだということを淡々と示した方が心に訴えるのではないかと思われた。昨今はちゃんと書かないと読み取ってくれないという思いがあるのか、わざわざどうだすごいだろう!と示しているような感じなのだけれど、それが非常にねちっこくてうざったい。

 それは置いておいて、流れとしてはまずはエネルギー、エンタルピーの説明を行い、エントロピーを説明をする。そしてエンタルピー、エントロピーの差(若干違う)が、実際に反応に使えるエネルギーになるというギブスの自由エネルギーを導入する。そしてギブスの自由エネルギーを用いて様々な反応が起こることが可能なのかを説明する。ブルーバックスという本の性質上飛躍がみられるのは仕方がないとしても、様々な反応例を挙げて、同じようにギブスの自由エネルギーで解釈できるということを示してくれるのはとても有意義なように思える。
 
 昨今の科学がいかに熱力学の周りで回っているのかということを示してくれる本であろう。

 目標まで残り182冊。