ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね
角田光代 著 『対岸の彼女』 p.97
本棚に数ヶ月ほっぽりっぱなしになっていた。読み始めたら、最後まで読み切ってしまった。
自分の居場所は?自分の居場所ってどう作るの?
そんな疑問に対して愚直にあがき続けた登場人物たちの過程を、ただ淡々と丁寧に描き続けたのがこの小説なのではないか?
きっと人間にはそんな居場所(生き甲斐)が必要なのだろう。
居場所は友達の間でもいいし、仕事の中にでもいい。見つける過程には、いろいろと傷つくこともあるだろうし、いろいろと大切なことにも気づいていくだろう。
そのあがきを、心理描写を、丁寧に描いたからこそ、そこにリアリティが生まれ、共感を覚え、考えさせられるのではないか。
タイトルは彼女たちではなく、彼女になっている。ふとその意味を自分なりに空想してみると、誰にでも当てはまることだからではないだろうか?彼女はほかの誰でもない我々なのであろう。
だからこそ、この小説は我々自身があがいているということを 1 、まざまざと、まるで鏡のように映し出す。
これは小説と見せかけた哲学書だと思う。
- と決めつけてはダメ(笑)??? [↩]