この本を知ったのはいつのことだったか?2chのとあるスレで知ったのを憶えている(鬱病に関するスレではない)。
この本は科学的かつ画期的かつ薬物を使用しない抑鬱治療法とされる認知(行動)療法についての本である。この本を買ったのはだいぶ前のことで途中まで読んで、付箋もしていたのだけれど、あまりの長さのため途中でやめてしまっていた。やめてしまったといってもこの本の価値を落とすものではない。途中まで読んだだけなのに、Amazonの評価に★5つをつけている 1 。
この本は変な組み方をしてある。前から450ページほどはこの認知療法の説明が縦書きでなされる。そして、なんと後ろから(つまり後ろから読み始める)330ページは薬物に関する説明が横書きでなされるである。まあ、縦書きや横書きがさして意味があるということでもなく、ただ単に珍しいということだけである。
閑話休題。
認知療法というのは何であるのか?
たとえば鬱に陥るとき、現実に良くないことがあって自分はそれで傷ついて気分が落ち込んだというプロセスを一般的には考える。しかしながら、そうではなくて、どんな現実があろうとも気分が落ち込むという選択をしたのは自分自身だという原則を持つ。だからといって、その人を責めるものではない(そんなことをしても治療にならないからね)。そこにあるのは知らず知らずのうちに身につけた、物事を極端に悲観的に見る非合理的な「認知のゆがみ」と呼ぶ自動思考である。自動的であるがゆえ、そこに合理的な判断を加えることができず、正常にものを考えられなくなっている。
そうであるとするならば、逆に考えると、気分が落ち込まない自動思考を身につければ、鬱に陥るようなことはなくなるだろうというのが背景に流れる思想だと思う。
そこで、まず認知療法では気分の落ち込むときに働いている自動思考を分析した。そこで得られたのは10個の非合理的な思考パターンだった。
- 全か無か思考
- 一般化のしすぎ
- 心のフィルター
- マイナス化思考
- 結論の飛躍
- 拡大解釈(破壊化)と過小評価
- 感情的決めつけ
- すべき思考
- レッテル張り
- 個人化
たとえばとあることで失敗をしてダメだと思ったとき。わたしは失敗をしたから人生の敗北者であるという非合理的な考えをする。認知療法による視点に立ってみてみると、ここには「全か無か思考」が働いており、1つの失敗がその人自身を敗北者ではない(合理的判断)と考えればよいということになる。
このようなことを自分が抑鬱状態になったときそれぞれに対して分類し分析をして、それに対して合理的判断を加えていくという訓練を行う。そういう訓練を行ううちに、抑鬱状態に至る自動思考を回避し、問題に対して合理的な判断を加えることができるようになる。
この本にはこうした認知療法の様々な訓練の手法が具体的に記されており、実際に紙と鉛筆を持って実践していくことが非常に重要となっている。
そして、これはただ単に抑鬱の治療法ではなく、様々な認知のゆがみの治療法でもある。たとえばこの本では依存、完璧主義などが扱われている。これらについてはまだ読んだことはないが、同じDavid Burnsによる「フィーリングGoodハンドブック」に記述されているのかもしれない。
後半については薬物の薬理作用の解説や副作用について非常に細かく載っている(辞書的)。著者も薬物療法と認知療法による治療の両方を取り入れる場合があるからだと思われる。
この本は言い訳をせず「今」を生きるための本である。
目標まで残り188冊。
- 書評を書いたわけではなく、「この本を持っています」というチェックをつける横のところ [↩]