書評: 数学でつまずくのはなぜか

 長らく考えて、ようやくどう書けばいいのか決めることができた。こういう多種多様なことが書いてある本は全部それを解説しても仕方がないしということで、書き方を迷ってしまう。

 読んでからだいぶ時間が経っているので、本書の内容からかなりかけ離れてしまうかもしれませんが、ご了承ください。

数学でつまずくのはなぜか
著者: 小島寛之
ページ数: 237ページ
出版社: 講談社
発売日: 2008年1月18日

 タイトルの「数学でつまずくのはなぜか」は本書の半分を表していると思う。もう半分はどうしたら、つまずかせないように教えることができるのか?ということ。

 数学ができる、できないということについて、著者はアフォーダンス理論に則り、人間には数学を感じる心のような感覚器官があるのではあるが、その感覚器が人によって様々であるために、数学が「できる」、「できない」かのように見えてしまう。ということであれば、逆に考えてその感覚器がとらえ得るような教え方ができないか?ということになる。それをたぶん作者は模索しているのだろう。

 前にも書いたかもしれないけれど、学問はそれができる間に紆余曲折した部分、梯子となっていた部分は、完成すると必要がなくなり外されてしまう。そしてあたかもあらかじめあったかのようにそこに存在するようになってしまう。

 そうすると後からこれを学ばんとするものにとっては、いきなり抽象的な概念を扱わなければならず、右往左往してしまう。であるから、まずは作者はどのような場面でそれが必要となったのか?ということを説明する。それは好奇心がうずくような問題を与えてみて、ほらこれを解くのにこういうものが必要でしょう?ということを伝え、それによってそれの本質的な意義や哲学を理解させようというプロセスなのかもしれない。このプロセスは数学が社会に必要か必要でないかという点から見るのではなく、好奇心を満足させるという学問本来の姿から見ている。

 学問を教えるというときには、本来は圧倒的な教養を持って(様々な普遍的構造を見抜くには教養が必要であるとわたしは考える)、その哲学を伝えなければならないのかなと感じた。その哲学というのは往々にして、それが考えられた当時、初めて必要とされた当時には生じているもので、そういう意味で歴史をたどるということはすさまじく意味があるのだと思う。

 目標まで残り178冊。